『彼女たちの断片』無事に千秋楽を終えました。

ご来場くださった皆さま、ありがとうございました。
感染者数も依然として多いなか、無事に千秋楽を迎えられたことに胸をなで下ろしています。

今回の作品で、私たちが対峙していたのは、国家でした。
もちろん、国家としての意思決定をしているのは、ほぼ男性ですし、その結果つくられている制度は男性優位なものになっていますが…。
医療というものは、国家と結託しやすいもので、その最たるものが中絶医療です。
あの場に集まった女たちが、医師を介さない原初的な医療行為として中絶をする、そのこと自体が、国家への抵抗として映っていました。
特に、最初は国家が決めた制度を代弁していた天野が、結局、中絶に手を貸すことになる姿は、明治時代の「新・産婆」と重って見えて、興味深かったです。
私はそういう解釈を稽古では誰にも言っていませんでしたが、本番のなかで、それが自然に伝わってきたのは、演出と役者たちの力だったと思います。
そういったことを読み取ってくださった方は、男性でも、とてもおもしろがってくれたようです。

作品に賛否があるのは当然のことですが、この作品は特に絶賛してくださった方たちがいた一方で、強い反発もありました。
「演劇としての評価」も、高くはならないでしょう。
それは、書き始める前から想定されていたことでしたが、そのことをわかった上で、私と同じ場所に立って、すべてを一緒に引き受けてくれた、演出家と、座組に感謝します。

また、こうした作品を演じるにあたって役者たちの精神的なフォローも必要でした。
役者同士、常日頃から同じ劇団のなかで信頼できる人間関係を築いてきたからこそ成立した舞台だったと思っていますし、それを守り抜いてくれた演出の力も大きかったです。
稽古はじめ、1ヶ月にも及ぶ本読みで、役者たちもたくさん意見を言ってくれました。
私に気遣って思うことを飲み込むことなく、自由に意見を言っていただいたおかげで、いいブラッシュアップができたと思っています。

戯曲も、演出も、演技も、もっと良くできるという部分はあると思いますが、この作品を、東京演劇アンサンブルさんと一緒につくることができて幸せでした。
私はひとりではありませんでした。

『彼女たちの断片』は配信を行います。
詳しくは、HPをご確認ください。
http://p-company.la.coocan.jp/p35.html